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☆姫の想い、彼の心☆ <イケメン戦国>

第28章 狐の化かし合い(光秀さん)(R-18)


九兵衛「光秀様はそういう方ですので。あれこれ頼んで舞殿の負担を重くしたくなかったのでしょう。
 この着物はきっと光秀様の罪滅ぼしです。
 あなたに似合う着物を選ぶのに随分と時間をかけていらっしゃいましたよ」


(え……?)


驚きと一緒に何か熱いものが胸に広がった。しかし深い意味はないだろうと気持ちを引き締めた。


(今はそこに焦点をあてる時じゃない)


自分の置かれている状況はどうなっているのか。味方を得たからと言って危険が去ったわけじゃない。


「操を奪われるんじゃないかって、そっちの方が負担があったんですけど…」

九兵衛「申し訳ありません。怪しまれないように演技に熱が入ってしまいました。
 あの方は敵を欺く前に味方を欺きます。それも任務を成し遂げるためですので許してあげてください」

「……はい」


本当は物凄く不満があったけど、それは九兵衛様じゃなくて光秀様に言うことだ。


九兵衛「今のうちに手首の手当てをしましょう」


九兵衛様が打ち身の軟膏だと塗ってくれた手首には、月明りにもクッキリと手形がついていた。


九兵衛「女性にこんな仕打ちをするなんて我慢なりませんね。
 あの男に何倍もの仕打ちをしてやります」


狂気とも怒気ともとれる感情が浮かびあがり、九兵衛様が親切なだけの人じゃないことを物語っていた。

人に見られて恥ずかしい思いをしないようにと、九兵衛様が手ぬぐいを巻いてくれた。


「私は店主と光秀様しか男性と関わったことがないのですが…九兵衛様は優しいんですね」


手当の後、九兵衛様は休憩しますと再び身体を横たえた。

布団ではなく畳に横になったのは私に気を使っているのだろう。


九兵衛「私は光秀様の側近です。
 優しいフリをして腹の中は真っ黒…かもしれませんよ?」

「光秀様より腹黒には見えませんが…?」

九兵衛「ははっ、あの方と比べたらそうかもしれません」


笑いをこらえるために九兵衛様は片手を口元にやり、緩やかな動きで私にも横になるように促した。


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