第28章 狐の化かし合い(光秀さん)(R-18)
「な、何するんですか」
光秀「いや、お前に危険が迫らないよう、まじないをかけただけだ」
「子ども扱いしないでください」
光秀「ふっ…」
「なんですか、今の『ふっ』は!」
今夜は決戦の日だというのに、気安いやりとりに和んでしまいそうだ。
光秀さんは私の問いには答えず、相変わらず読めない笑みを浮かべている。
光秀「俺もこれから忙しい。腹ごしらえでもしよう」
珍しく光秀様も食事の注文をしたので驚いていると、さらに驚くべき光景が広がった。
「光秀様が食事するなんて珍しい…って、何してるんですか?」
光秀様は上品に食事をしそう…、という予想は見事に裏切られた。
ご飯の上におかずをどんどん乗せている。
(行儀悪い!)
光秀「効率的に早く食べるためだ」
「かえって食べにくくないですか。あ、焼き魚が滑り落ちそうですよ!
そんな食べ方をしてお母様に怒られませんでした?」
光秀様はご飯茶碗から滑り落ちそうだった魚を箸で掴み、口に入れた。
(頭も骨も取ってないよね……)
茫然として見ていると、光秀様は口を動かしながらご飯の上に煮物を全部乗せ、煮汁までかけて食べ始めた。
光秀「仕事柄、まともな時間はとれないのでな。
母上が生きていた頃はそれなりに行儀よく食べていたぞ」
「天国で光秀様のお母様が嘆いてますよ、きっと」
光秀「違いない」
そう言っている間に半分くらい食べ終わっている。
(うそ、食べるの早いっ!)
魚の骨はどこにいったのか気になる。きっと食べちゃったんだろうけど。
ちゃんと噛んでるのか、胃がおかしくならないか心配になった。
「味が混ざって気持ち悪いとかないんですか?」
光秀「特にそう感じた事はないな」
「へえ…」
光秀「俺のことはいい。さっさと食べて、飲んでおけ。
今を逃せば、今日は飲食している時間はないぞ」
光秀様が追加注文したお茶を飲み、私はお腹いっぱいで夜の仕事へと向かった。