第28章 狐の化かし合い(光秀さん)(R-18)
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馬鹿にされては躱し、我慢ならない時は撃退し、しばらく腹の探り合いを経て、私はようやく話を聞いてみる気になった。
光秀「力を貸して欲しい」
いよいよ本題に入ったと気負う私の前に、見覚えのある薬包紙が置かれた。わずかな膨らみがあるところを見れば、中身は入ったままのようだ。
(これ、夜にうちのお店で作っているやつだ…)
じっと凝視していると、明智様はその薬を懐に戻した。
光秀「店主が売買しているのは中毒性の高い媚薬だ」
「媚薬ですか…」
狂ったように交わる男女の声を耳にしていたから、薄々予感していたので今更驚きはなかった。
それにしても中毒性が高いというのは初めて知った。
光秀「催淫効果、高揚感、多幸感を得られ、摂取を重ねると薬が切れた頃に虚無感や不安感に襲われる薬物だ」
薬を手放せなくなった重症患者が増えてきているそうで、それを克服するには長い時間と根気が必要だそうだ。
まさかそんな恐ろしい薬を作って売っていたとは知らず、間接的に手伝いをしていた自分が恐ろしくなった。
(そんな薬を店で売っていたなんて…。
知ったからには見過ごすわけにはいかない)
手を組むのが悪名高い明智様というのが少々心配の種だけれど、迷ったのは一瞬だけだった。
「協力します。ただし、私と和菓子職人の今後を世話していただきたいです」
明智様の纏う空気がふと柔らかく変化した。
光秀「内部の助けが必要だったが関わっている人間が少なすぎて手間取っていた。助かる。
お前達の今後は約束する」
こうして裏切りと背中合わせで、明智様の陰謀に協力する日々が始まった。