第27章 魔女の薬(謙信様ルート)(R-18)
謙信「何故その発想になる?
俺は一度たりとも舞を無下にしたことは無いだろう?」
「そう、ですけどっ、でも急に避けられて、お酒の席に全然呼んでくれなくなって……。
あの日を境に態度が変わったから、もう…」
私なんか…、と卑下しそうになって口を噤むと、不意に謙信様に抱きしめられた。
袴が汚れるのも構わず、地面に膝をついて私を抱きしめている。
謙信「お前が不安を抱え、涙したということは、少しは…寂しいと思ってくれたのか?
俺に会いたいと、思ってくれたということか?」
「う……」
想いがせり上がってきて嗚咽がこぼれた。
言葉にしなくても謙信様には伝わり、引き寄せられて膝の上に乗せられた。
謙信「何故一夜限りなどと言ったのだ?
こうしてお前を泣かせる羽目になるのなら、あの夜から始めれば良かった…」
「ふ……ぅ」
頬に当たった上質な着物が涙でどんどん濡れていく。
「謙信様が私を想っていてくださったとは知らず、媚薬のせいで好きでもない女を抱いたと後悔するだろうと…だから…」
謙信「お前なりに気を使ったのだな…。
だが舞はどう思っていた?お前の返答と態度は一致していない。
本当のところ、舞は俺の事をどう思っている?」
「前から憧れていたんです。謙信様が素敵すぎて一緒の空間に居るのが辛くて逃げてしまったし、会話もできませんでした。
不意打ちで目が合って、嬉しくて失神しそうになりました」
謙信「あの反応は怯えではなかったのか…?」
「ふふ、はい…。憧れを拗らせたようなものです。
謙信様を遠ざけようとしたのは、謙信様の好意があの夜に由来したもので、簡単に醒めてしまうものだと勘違いしていたからです…。
本当は謙信様のお傍に居たいです。きっとあなたの傍は温かくて、毎日が幸せだろうなと思います」
謙信「ならば、俺の傍に居れば良い」
「私……」
謙信「なんだ?平凡だとか、ただの居候女などと言うなよ?
お前は俺の心を奪い、誰もが恐れる腕の中で『安心する』などと抜かしたとんでもない女だ。
どこにも行くな。俺に舞を愛させてくれ」
綺麗な笑みを浮かべて見下ろしてくる瞳に冷ややかさはない。
私にだけ向けられる温かい眼差しに、心から安心して微笑んだ。