第27章 魔女の薬(謙信様ルート)(R-18)
謙信「ならばどうしろと言うのだ!?
俺はお前を手放すつもりはない!」
「あの夜のことを引きずっているのですか?
それなら………迷惑です」
もしあの夜がきっかけになって謙信様が好意を持ったのだとしても、それは気まぐれのような恋だと思う。
弱っていたところを助けられた。
それも肉体関係をもつことで助けられたとなれば、好きだと錯覚してしまっても仕方ない。
きっと運命的な人に出会えば、私に好意をもったことなど忘れてしまうだろう。
(私の気持ちだって、現代に帰ればすぐに消える、はず……)
どこから崩れるかもわからない、砂山のような恋愛なんてしたくない。
最初から崩れるとわかっているのだから、手を出さずに離れるのみ、だ。
二の腕を掴んでいた手に力がこもり、恐ろしいほど整った顔が私を覗きこんできた。
謙信「俺が居ない方が、舞は幸せか?」
「っ」
答えるのが辛い。
迷惑ですと言うだけでも謙信様を傷つけると思って辛かったのに。
「……居ても居なくても、変わりません。
私の幸せに謙信様は関与していません」
感情がこもらないように気をつけたら、ひどく冷たい声になってしまった。
(やめて、もう……何も言わずに行かせて……)
謙信「俺はお前が孕んでいれば良いと、この一月ずっと、そう願っていた。
月のものがきたと聞いて、胸にあるのは安心ではなく落胆だ」
「何を…言い出すんですか?」
頬を優しく撫でられているのにも気付かず、私は茫然と謙信様を見つめ返した。
謙信様が寂しそうな顔で視線を落とすと、長い睫毛が頬に影を落とした。
謙信「俺は以前から舞を好いていた」
「…………え?」
謙信「だが舞は俺を好くどころか怖がっていた。
近くに行けば逃げるように去り、話しかけたところで会話も続かなかった。
目が合えば卒倒しそうになり…どうしようもなかった」
「それは……」
ただ謙信様がイケメン過ぎて、自分の平凡さが際立ちそうで逃げただけだ。
圧倒的なカリスマ性を醸し出している謙信様に話しかけられて頭が回るはずがなく、一言二言、返事をするのが精いっぱいだっただけ。
見ないようにしているのに、もろに目が合って心臓を貫かれて息ができなくなっただけ…。