第27章 魔女の薬(謙信様ルート)(R-18)
謙信「嘘を……言うな。
お前に付けていた女中から報告はあがっている。
このひと月、舞に月のものがきていない、とな」
(なるほど、それで謙信様は私が妊娠したと思い込んだのか)
身重(だと思っている)の身体で歩き続け、お腹が痛いと言ったから怒って慌てたのだろう。
「月のものなら昨夜きましたよ。
夜中だったので一人で対処しましたし、今日はお城を出ることばかり考えていたので女中さんが知らなかったのも無理はありません」
謙信「なんだと?本当のことか?」
「ええ、だから身体がダルくてお腹は痛いですし、さっきみたいにふらついてるんです」
謙信「月のものがきたのか……そうか…」
謙信様は拍子抜けしたように脱力し、両手で顔を覆っている。
いつもは威厳を漂わせている肩や背中が小さく縮んで見えて、笑いがこみ上がってきた。
「もしかしてですが、心配してくださったのですか?」
隠しきれない笑いが言葉に滲み出て、謙信様は私の顔を横目に眉を寄せている。
謙信「当たり前だ。お前は全部忘れろ気にするなと言っていたが、ないがしろにしてはいけないことを俺はした。
月のものの有無と、急に倒れでもしないかと気が気で居られず、信玄のところの女を拝借して舞を見張らせていた」
そういえば軒猿には女性が居ないと佐助君がぼやいていたのを今思い出した。
「そう、だったんですか……。プッ、フフ、あははっ」
笑い出した私を横目に謙信様はまだ脱力している。
人に笑われているのを放置するくらいだから、よほど安心したらしい。
「ふ、ふふ、申し訳ないんですけど、謙信様の慌てっぷりがおかしくてっ…、ふふっ」
切り株の椅子で身を寄せ合って座っているので、脱力している謙信様を近くに感じられた。