第27章 魔女の薬(謙信様ルート)(R-18)
「?」
(馬の手配に行った子が…戻ってきたのかな……)
明らかに私に気が付いて近寄ってくる足音に、静かに警戒する。
ざっ、ざっと歩く足音が女性のものではないと気づいた時にはもう逃げ出すタイミングを逃していた。
謙信「それで隠れているつもりか。出てこい、舞」
「謙信様っ!?」
まさかの展開に茂みからヒョコっと顔を出すと、鬼気迫った顔の謙信様が立っていた。
気迫に気圧されたけれど、1か月ぶりに対面し、元気そうな姿にほっとした。
「なんで謙信様がここに?」
謙信「なんで、ではない。
お前こそ……何故黙って春日山城を出たっ!?」
(こわっ!)
あまりの剣幕に、また茂みに引っ込もうとしたところを謙信様に引きずり出された。
手首を掴む力強さに、あの夜を思い出して心臓がドキリと鳴る。
「実家に帰りたくなったんです。
何も言わずに出たのは申し訳ないですけど、こちらにも事情があったのでお許しください。
ここには佐助君に聞いて来たんですか?」
謙信様がめちゃくちゃ怒っているのはわかったけど、なんでなんだろう。
居候が勝手に居なくなったことが、そんなに頭にくることなんだろうか…?
謙信「佐助に聞いてすぐに部屋に言ったが舞は既に発った後だった。
急いで追ったところ、途中でお前に付けていた忍びに会い、この辺だろうと目星をつけたのだが…怪我をしているそうだな?どこだっ!?」
泣きたくなるくらい強く言われて肩が跳ねた。
父にだってこんなに強く叱られたことはない。
「足……です」
やっとのことでそう言うと、謙信様は血の滲んだ足袋を見て目を剥いた。
謙信「っ……!なんということを…、このっ…痴れ者!」
「えっ、えっ!?」
罵られて、戸惑っているうちに抱きかかえられた。