第27章 魔女の薬(謙信様ルート)(R-18)
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「ふう、やっぱり歩きはキツイな……」
出発直前、忍びの女の子が『一人旅は危険です』と、ついてきてくれることになった。
頼もしい連れができたと出発したけれど、徒歩の旅は思いの外大変で、たいして進まないうちに休憩を取る羽目になった。
(舗装された道路を歩くのとはワケが違うな……)
草履に慣れたと思っていたのに足の裏が地面を踏む度に痛むようになり、鼻緒が食い込んだ指の付け根から出血をおこしてしまった。
馬を手配しに行った忍びの子が心配で、人気のない細い山道に顔を向けた。
「どこまで行ったのかな…。まさか越後まで戻ったとか…じゃないよね」
たいして進んでいないとはいえ、越後を出立して3時間は歩いた。
途中に馬を手配できるような大きな町はなかったし、越後まで戻ったとしたら大変な距離だ。
「悪いけど間に合わなくなると大変だから、少しずつ進んでおこうかな」
彼女の軽やかなフットワークを見れば、私に追いつくのは可能だろう。
お供を買って出てくれた女の子は信玄様お抱えの三つ者に所属している忍びだった。
信玄様のお眼鏡にかなった?とても可愛いくノ一だ。
「よいしょっと……」
おばあさんのような掛け声で、重たい腰をあげた。
荷物は現代から持ってきたバッグと水筒、佐助君が持たせてくれた忍者食だけだけど、そう重たくない荷物が万全とは言えない体には重たい。
「現代に帰ったら……何しようかな」
あそこに行って、あれを買いに行って、その前に家族に会いに行かなきゃ大騒ぎしてるよねと考えながらゆっくりと歩く。
鼻緒で傷ついた場所は応急処置したけれど、歩くとやっぱり痛む。
耐えて歩くうちに足袋に血が滲みだし、でも次の街並みが見えていたので、そこまで歩こうと頑張って歩き続けた。
「はあはあ、きついなぁ……」
歩く衝撃を吸収してくれない草履では、足の裏、特にかかとに負担がかかって痛い。
流れる汗が目に入ったので立ち止まって拭っていると、遠くから勇ましい馬蹄の響きが聞こえてきた。
この時代、どんな人が馬に乗っているかわからない。
物取りや牢人の可能性を考慮して近くの茂みに身を隠すと、小気味よい蹄の音が近くで止まり、ザっと人が下馬する音がした。