第27章 魔女の薬(謙信様ルート)(R-18)
(謙信様はこんなところで躓いて良い人じゃない)
身内の大名の策に嵌り、弱りきった姿なんて、誰にも知られてはいけない。
知っているのは私と兼続さんだけ。
助けられるのは、私しかいない。
「これから起こることは、薬を抜くための治療だと割り切りましょう」
謙信様に状態をわからせるために二の腕をさすってあげると、形の良い唇から艶めいた声が漏れた。
「腕を撫でただけで辛いでしょう?薬が切れるのを待っていたら謙信様がおかしくなってしまいます。
私はニセの恋仲をまっとうすることもできませんでしたし、謙信様に助けていただきました。
どうか役に立たせてください」
謙信「やめ……ろ」
謙信様の帯に手をかけると、その上から手を掴まれた。
「同意なしで触れるのは、相手が女でも男でも犯罪です。
嫌なら……部屋に戻ります」
謙信様は禁欲的な方だし、もし噂通り本当に女性が嫌いだとしたら、私の申し出は嫌悪でしかない。
判断を委ねて手を止めると、荒い息をつく謙信様と暗がりで目が合った。
「どうしますか?」
沈黙が続き、濡れたように光る目を見ながら返事を待った。
謙信「こんな形で…お前に、触れたくなど……な、い」
「?」
(こんな形?ってどういう意味?
どんな形であろうと触れたくなかったってこと?)
私の立ち位置は佐助君の知り合いであって、女性としてNOということだろう。
過去に謙信様から貰った言葉と言えば『ぼんやりしている』『ふぬけている』だから、綺麗だ、可愛いなんて評価は期待していなかった。
(真正面から言われちゃうと、堪えるな…)
「どうせ今夜限りの関係です。
女が私しかおりませんので我慢してもらうしかありませんが、嫌だと仰るなら無理には…」
謙信「違う。そう……じゃない」
謙信様が両眼を閉じて苦悶の表情を浮かべている。
どう違うのか聞きたくても口からはハアハアと息が漏れ、さっき汗を拭ったところに新しい汗が浮かび酷く辛そうだ。