第27章 魔女の薬(謙信様ルート)(R-18)
性欲を薬で煽られ、あの謙信様が苦しんでいる。
謙信様だけじゃなく、きっと兼続さんも淫靡な感覚と戦っている頃だろう。
普段は性欲があるのかと疑うほどストイックなお二人が、欲を無理やり引きずり出されて苦しんでいる。
(どうしたら……)
ガシャン!!
「っ!?」
湯のみを落としたのか倒れたのか。一緒に水音も聞こえて、私は布団の上に飛び起きた。
(大丈夫かな……そういえば、水筒のお水、謙信様に渡さなかった)
部屋の水差しは兼続さんが毒見させたと言っていたから、それなら安心だと忘れてしまった。
息を詰めて耳を澄ましていると、落としたものを拾う音は聞こえず、荒い呼吸だけが聞こえていた。
(具合が悪くなって倒れたとかじゃないよね)
私と避難した兼続さんがふらついていたことを思うと、広間に残った謙信様の方が症状は酷そうだ。
(このまま放っておいて良いの?)
解毒剤がなければ新鮮な空気を吸い、水を飲み、自然解毒させるしかない。
他に何か方法はないかと考えて見つからず、途方にくれた。
布団の上で身動きもできずに心配していると、かすかな声で名前を呼ばれた気がした。
(……気のせい?)
部屋に入ってくるなと言った本人が私を呼ぶはずがないと思っていると、また名前を呼ぶ声がした。今度はさっきよりもハッキリと聞こえた。
謙信「舞………」
何があっても入ってくるなと言われ、でも名前を呼ばれている。
(どうしたらいいの?)
開けてしまったら取り返しのつかないことになるのはわかっている。
(開けちゃいけないんだよね)
慰める勇気もないのに、中途半端な情けなんてかけちゃいけないと耳を塞いだ。
その後もずっと謙信様の声を無視し続けた。
襖を開けて入ってこなかったのは、きっと謙信様の理性が残っていたからだろう。