第26章 魔女の薬(共通ルート)
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「媚薬……ですか?」
あてがわれていた豪華な客室に戻ると、兼続さんが事情を話してくれた。
兼続「広間で焚かれていた香に違和感があったが、乾杯の酒を飲んだ直後から症状が顕著にあらわれた。
おそらく両方ともそっち方面の怪しい品だろう」
「何故……」
薬を盛られたという事実が恐ろしくて思考が止まった。
けど、それを許してくれるほど兼続さんは甘くない。
兼続「誰が利を得るか、少しは自分の頭で考えろ」
兼続さんは部屋に戻るなり窓を開け放ち、外の空気を吸っている。
傍らには水が入った湯呑が置かれていて、おそらく解毒の最中なのだろう。
「私を追い払って、謙信様をいただいちゃおうってことですか?」
謙信様との婚姻を狙っての行動なら大名の仕業に違いない。
代替わりしたから新旧どちらの企みかわからないけれど。
兼続「それもあるが、舞に他所の男と既成事実を作らせるためだ」
「他の男の人と……既成事実…?」
兼続「あの香は無差別と言っていいほど広範囲に漂っていた。
恐らく薬を盛った酒も、大勢に振舞われたはずだ。
あの場に居た男達が欲情し、手っ取り早く近くにいる女に目をつけて襲ってくる可能性があった」
「そういえば中座する時に、何人かついて来ようとした人達が居ましたよね。
もしかしてあれは……」
兼続さんが付いていているのもお構いなしに、『部屋までお送りしましょう』、『転ばないよう手を引いてあげましょう』としつこく言われたことを思い出した。
兼続さんが上手く追い払ってくれたから良かったけど、かなり積極的でおかしいとは思った。
兼続「舞に目をつけていた輩だ。
お前は気づいていなかっただろうが薬にあてられた顔をしていた」
欲望の対象に見られていたことに寒気がした。
「な、なんで既成事実なんか…」
謙信様の恋仲として来たのに、なんで初めて会う男性達と関係をもたなくてはいけないのか。
危ういところまで貞操の危険が迫っていたのだと知り、混乱した。
兼続「はあ。自分で考えろ」
兼続さんは説明するのも辛そうだ。