第25章 耳掃除をしよう(安土勢)
光秀「……今の言葉、確かだな?
俺が寝ても帰るなよ。
禁止令が出たなら、耳掃除はこの部屋に来て、2人きりの時にやってもらおう」
「は?さっき耳掃除はいいって…」
光秀「お前が『してあげる』と言ったのだから、『させてあげる』だけだ」
「確かに耳掃除だってなんだってしてあげるって言いましたけど…そこ食いつくところですか?」
問いかけても返事はなく、ゆっくりと瞼が下りて潤んだ瞳は見えなくなった。
(やっぱり光秀さんは耳掃除して欲しかったんだ!)
熱にうなされながらも寝ないのは、耳掃除をしてもらうにはどうしたらいいか考えていたってことだろうか?
(あきれた…)
いつもいつも光秀さんには敵わないけど、この件に関しては馬鹿な人だと断言できた。
「はあ……。光秀さん、ほんっと、馬鹿ですね。
言ってくれれば信長様に秘密で耳掃除するくらいしてあげますし、看病して欲しいなら、ずっとしてあげますよ。
変なところで、いらない労力を使わないでくださいよ」
光秀「素直に言っては面白くないからな」
「その感覚がサッパリわかりません。
さ、寝てください」
光秀「ん………」
撫でていた手を止めると、手首を掴まれ、もっとしろと再度頭に乗せられた。
今日の光秀さんは大きな子供みたいだ。
「だから素直に言ってくださいってば、もう……。
眠るまで撫でてあげますよ」
呆れかえって、それさえも通り越して、笑いしかでてこない。
素直なのか素直じゃないのか、とにかくこの日の光秀さんはいつもと少し違った。