第25章 耳掃除をしよう(安土勢)
「九兵衛さん、これを秀吉さんに届けるように言われました。
至急だそうです」
九兵衛「承知いたしました」
「そ、それで……」
光秀さんが熱を出していることを言っていいものか迷っていると、九兵衛様は懐から薬包をひとつ取り出した。
九兵衛「舞様に度々迷惑をかけて本当に困った方です。
申し訳ありませんが、これを飲ませていただけますか?」
(光秀さんの不調に気づいていたんだ。
流石だな、九兵衛さん)
九兵衛さんの後ろには看病に使う一式が用意されていた。
九兵衛「むさ苦しい私よりも、舞様に看病された方が回復も早いと思われます。
私が戻って来るまでの間でかまいませんので、よろしくお願いします」
「え?は、はいっ」
(九兵衛さんをむさ苦しいなんて思ったことないけどな)
そう思ったのが顔に出ていたのか、九兵衛さんは小さく笑った。
ふっと吹き出した顔は大人の魅力が滲んでいる。
九兵衛「男同士とはそういうものですよ」
ドキっとしている間に、九兵衛さんは去っていった。