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☆姫の想い、彼の心☆ <イケメン戦国>

第25章 耳掃除をしよう(安土勢)


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熱を隠して一人で帰った光秀さんが気にかかり、日が落ちる前にお見舞いに行った。

ところが部屋に通されると、『もう熱はさがった』と仕事をしていた。

信じられなくて顔を覗き込むと、涼しい顔で微笑まれる。


光秀「なんだ?男の顔をそう覗き込むものではないぞ?」


顔色も普通だし、たったあれだけの睡眠で回復したのだとした、そら恐ろしい回復力だ。


「どういう身体してるんですか。
 せっかくお見舞いにきたのに…」

光秀「無駄足だったな。
 せっかくだ、来たついでに今書いている文を秀吉に届けてくれ」


光秀さんの筆は滑らかに動き、紙面が美しい文字で埋められていく。
伏し目がちに文字をしたためる姿は、秀麗な男性そのものだ。


(意地悪してこなければ文句なしの人だよね…)


視線を感じているだろうに、光秀さんは集中をとぎらせることなく手を動かしている。


「そういえば、信長様に耳掃除禁止令を出されてしまいました」

光秀「なに?」


あんなに滑らかに動いていた筆がピタリと止まった。


「耳掃除する度に膝枕をしていたら、余計な考えを持つ人が出てくるだろうって、そんな理由です。
 お約束していましたが、光秀さんの耳掃除はできなくなりました」

光秀「それは残念だ」


また筆が動き出し、光秀さんの横顔は全然『残念だ』なんて顔はしていなかった。


(耳掃除をして欲しそうに見えたけど勘違いだったかな)


「耳掃除…良かったんですか?」

光秀「信長様が禁じたのなら仕方ないだろう。
 任務中に耳に異物が入った気がして掃除してもらいたかったのだが、放っておいてもそのうち出てくるだろう」

「え?耳に異物ですか?見せてください。
 時々ですが耳に虫が飛び込む場合もあるんですよ?」

光秀「だが禁じられたのだろう?」

「見るだけなら禁じられていません」


信長様が禁じたのは興味本位の耳掃除で、ちゃんとした事情があるんだったら許してくれそうだ。いや許してもらおう。

書き終えたのか光秀さんは筆を置いた。


光秀「では墨が乾くまでの間、耳を見てもらうことにするか」

「虫じゃないといいですね。どちらの耳ですか?」

光秀「こっちだ」


座ったままの光秀さんの耳を覗くも、光の加減で何も見えなかった。


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