第25章 耳掃除をしよう(安土勢)
皆がわいわいやっている間に信長様は平静を取り戻し、身体を起こした。
信長「舞の耳掃除は今日をもって禁ずる。
いちいち膝枕なんぞしていては、要らぬ想いを抱く者が出てくるだろうからな」
皆は残念そうにしていたけど、信長様が禁じたなら仕方ないと頷いた。
(ふふ、理由をつけて禁止にして、もうこんなことが起きないようにしたのね)
真実を知ってしまった後では、真っ当な理由の裏に隠された秘密がおかしくてたまらなかった。
信長様の威厳が、いつもの半分くらいにしか感じなくて笑っていると、唐突に名前を呼ばれた。
信長「舞」
「は、はい!?」
信長「その竹の棒一本で城の者を喜ばせた褒美をやろう。
楽しみにしていろ」
「私も楽しんでやっていたことなので褒美なんていりませんよ」
秀吉「こういう時は黙って『はい』だ!」
「だって…」
信長「黙って受け取れ」
命令口調の低い声は、いつもよりほんの少し優しく響いた。