第25章 耳掃除をしよう(安土勢)
慶次「まだか~?」
「あ、うん、今やるよ」
意を決して慶次の耳に集中する。
「手前から奥に向かって少しずつ進んでいくから、痛かったら言ってね」
慶次「おうよ。ん……」
「あ、動いた!ふふ、動いちゃ駄目だよ」
慶次「ん……」
大きな体躯が静かに固まり、時折ピクンと跳ねる。
「この辺かゆくない?」
慶次「いいな、そこ…」
良い所を探し出しカリカリとこすると、慶次が吐息を漏らした。
気持ち良くて、私に任せきりになっているようだ。
(ふふ、慶次にはいつも頼りっぱなしだから、身体を任されるなんて新鮮だな)
「はい、こっちはおしまい。
反対をやるから、身体の向きを変えてくれる?」
慶次「おう…」
身体を反転させた際に手ぬぐいがめくれて、慶次と目が合った。
(慶次の目が潤んでる!)
「そんなに気持ち良か……きゃ」
慶次の手が私の後ろに回り、足の裏をくすぐった。
慶次「あ?急にひっくり返ってどうした?」
「どうしたって……もう」
慶次「早くしろよ」
「はいはい」
素直に気持ち良いって言えば良いのにと、慶次にだけ聞こえる小言を言いながら耳掃除をする。
慶次「はぁ……」
手ぬぐいの下から時折漏れる吐息は悩ましい。
聞こえているのは私だけなんだろうけど、聞いているとこっちがソワソワしてくる。
「はい、おしまい!」
慶次「………」
寝転んだ時の威勢はどこに行ったのか、慶次は借りてきた猫のように大人しい。
普段賑やかな人が大人しいと具合が悪いのかと心配になる。
「大丈夫?痛かった?」
慶次「大丈夫だ。しかし舞にこんな特技があったなんてな。
傍に置きたくなった」
「……は?」
大広間がざわりとなった。