第25章 耳掃除をしよう(安土勢)
「は?じゃないよ。耳かきするなら膝枕しないと。
今更照れる間柄じゃないでしょ。はい、ここに来てね」
家康「ちょ、ちょっと」
腕をぐいぐい引っ張って家康を寝転ばせる。
膝に頭を乗せた家康は顔を真っ赤にさせて悪態をついた。
家康「その小さい体のどこに馬鹿力を隠してたの」
「そんな大げさな。さ、目を閉じてリラックスしてね」
家康「りらっくす?」
「だらんとしてて」
家康「何それ。人の膝の上でだらんとできるわけない」
「大丈夫。全部私に任せていれば良いから」
家康「そのセリフを舞に言われると自分が情けなく思えてくる」
「わかったから、はい、目をつむってね」
ふわふわの癖毛を撫でてあげると、家康は『ほんとにわかってるの?』という顔をして、やっと静かになってくれた。
秀吉さんは耳かき棒を興味津々で見つめ、私は神経を集中させて家康の耳に耳かきを差し入れた。
家康「ん……」
秀吉「い、痛いのか、家康」
注射をした人に『痛かった?』って聞く子供みたいに、秀吉さんが戦々恐々としている。
なんといっても次は自分の番なのだ。
家康「痛くないです…ん……」
家康はしかめ面をしているけど、私にはわかる。
(ふふ、気持ち良いのを耐えてるんでしょ……)
場所を移して、違う箇所をカリカリすると家康の体がモゾっと動いた。
だてに女中さん達を相手に耳掃除をしていたわけじゃない。
経験値を稼いだおかげで、皆が気持ち良い反応を見せる場所は心得ている。
「動いちゃ駄目だからね」
家康「わかった」
秀吉「大丈夫か、家康」
家康「大丈夫ですから、ちょっと静かにしててください、秀吉さん」
秀吉「わ、悪い」
「ふふ」
(気持ち良いから耳に神経集中したいんだよね、わかるわかる♪)
掃除すること数分。
「はい、おしまい♪」
両耳の掃除が終わり体を起こした家康は……
(艶っぽいな…)
潤んだ翡翠の瞳は悔しげに私を睨み、頬は紅潮し、全体的に気だるい雰囲気を放っている。
予期せず快感の神経を刺激されて、怒っているようにも見えた。
「え、っと、耳掃除はどうだった?」
家康「………どうもしない」
素っ気なく自分の席に戻って行き、今度は秀吉さんに行けとばかりに視線を投げている。