第25章 耳掃除をしよう(安土勢)
秀吉「舞、入っていいか?」
「秀吉さん?どうぞ」
襖が開くと秀吉さんと、その後ろに家康が立っていた。
「わあ、家康が来てくれるなんて珍しいね。
どうぞ、今、お茶入れるね」
私が淹れたお茶と、秀吉さんが持ってきてくれたお茶菓子を並べて座布団に座った。
(秀吉さんと家康かぁ、珍しい組み合わせだな)
何かあったのかと思ったけど、良くないことが起きたとか、そういう雰囲気はなかった。
美味しい焼き菓子を食べ、お茶で一息ついたところで、秀吉さんが話を切り出した。
秀吉「舞、竹の棒で女中達の耳掃除をしていると聞いたんだが本当か?」
「え?そんな話が広まってるの?」
秀吉「女中達の会話にお前の名前が出ていて、何事かと問いただしたら、『舞がしてくれた耳掃除が気持ち良かった』という話だったんだ」
「なるほど~、それで秀吉さんも掃除して欲しくて来たのね?
いいよ、今耳かき持ってくるね」
腰を浮かせた私を、秀吉さんが引き留めた。
秀吉「ま、待て、そうじゃない」
「恥ずかしがらなくて良いよ。だってこの時代って耳かきがないんでしょう?
あの気持ち良さは、ぜひ体験して欲しいな」
家康「耳の中をいじくられて気持ち良いわけないでしょう」
家康がさも怪しいといった表情をしている。
「家康も噂を聞いてやってきたの?」
家康「秀吉さんから話を聞いて、耳の掃除なんて必要ないってあんたに言いに来ただけ」
「耳掃除の必要性は色々議論されてるけど…とにかく試しにやってみようよ?
秀吉さんより先に家康を先にやってあげる!」
家康の頑なな態度に、私の闘争心に火が付いた。
(あのゾクゾク感を味合わせてやるんだから!)
絶対気持ちいいって言わせてやると気合を入れ、箪笥から耳かきを出してきた。
「さ、家康、ここに来て寝転んで」
秀吉「っ!?」
家康「は?」
二人の目がまん丸になっている。