第24章 戦国時代の付き合い方(慶次)(R18)
――――
――
慶次「舞」
「……」
慶次「秀吉の前で口を利けて、俺の前では利けないってか?」
「違う……けど……」
放心状態で何を話していいのかわからなかった。
秀吉さんの前であれほど感情が荒ぶっていたのに、今は頭がぼーっとする。
慶次「まあ、お前が困ってるだろうなと予想していたが、まさかあんなに取り乱してるとは思わなかったぜ」
(気まぐれにあげた簪で大騒ぎして、呆れられちゃった…?)
俯いている私に手が伸びてきて、髪をひとすくいされた。
髪に沿って指が滑っていく様を追いかけ、そこでやっと慶次と目が合った。
初めて見る晴れ着姿は、戦装束とはまた違った慶次の魅力を引き出している。
(もうこうなると俳優の域で格好良いな…)
どんな柄も、どんな色でも自分のものにして着こなす人はなかなか居ない。
そう。なかなか居ない、その人が、私を好きかもしれないとどうしても信じられなかった。
慶次「こんなになるまで泣く必要なんてなかっただろうが。悪かったな」
「わ、私……、こんなお誘い受けたことないから、どうすれば良いのかわかんなくて……」
挿す勇気がどうしても持てなかった簪を、ぎゅっと握った。
緊張と動揺が波のように押し寄せてきて、手が震えている。
慶次「お前の気持ちはわかった。いきなり押し倒すようなことはしねえから安心しろ。
ただし遊びで誘ったんじゃないってことだけは覚えてろよ」
少しかさついている指先で目元を拭われた。
(遊びじゃないって言ってくれたっ)
胸がじわっと熱くなって、返事をしようとしたらしゃくりあげそうになった。
それを我慢すると喉の奥からくぐもった変な音がした。
(な、なに今の音!)
喉元を押さえて後ろに身を引くと、目を見開いた慶次と目が合った。