第24章 戦国時代の付き合い方(慶次)(R18)
――――
――
秀吉「やっぱりこうなったか」
「だ、だって、まだ決心がぁ…」
帰還の知らせがあってからちょうど3日目。
大勝利をおさめた家康と慶次は予定通り安土に帰ってきた。
いつもなら戦から帰ってきた武将を門前で出迎えるけれど、今回ばかりは簪をどうしたら良いのか決めあぐね、自室にこもった。
大広間では戦勝祝いの宴が催されていて、私も秀吉さんも宴のために晴れ着を着ている。
あとは広間に向かうだけだというのに、慶次に会うのが怖くて、結局秀吉さんの部屋に転がり込んだ。
簪を両手に握りしめてどうしようどうしようと泣きべそをかく私に、秀吉さんは頭を撫でてくれた。
秀吉「ちょっと遅れると伝えてくれ」
女中「はい」
「ごめんね、秀吉さんまで巻き込んじゃって」
秀吉「舞が困ってるんだ、傍に居てやるのは当たり前だろう。
それでどうしたいんだ?」
秀吉さんの優しさが沁みて、涙で視界が揺れた。
「よ、よく考えてみたんだけど、グス、慶次のことは嫌いじゃないの。
だからいきなり体の関係から入るんじゃなくて、少しずつ仲良くなれたらなと思って…ヒック!
でもこの時代の人って、そんなちんたらした恋愛、嫌なのかなって…ぐす、ズズ……」
泣きながら喋っているので、ちっとも話が進まない。
手汗でべたべたになった簪が小さな花を揺らしている。
秀吉「ああ、ほら、そんなに泣くな」
撫でられた分だけまた不安が押し寄せてきて涙が溢れた。
「ひ、秀吉さん、慶次はどんな気持ちでこれをくれたのかな。
ヒック、本気なのか遊びなのかわからなくて、私、割り切った大人の関係は無理なの。
慶次にいきなり体の関係を迫られたらどうしよう……っ!
ここまで、ぐす、悩むなんて、私ってこの時代で重い女なんじゃっ…ふ、ぅ、ヒック」
針子の皆は簪を貰ったならそのままGo!って反応だったし、この時代の恋愛観についていけないというか、とにかく何から何まで悩んでいた。
秀吉「重くない。大丈夫だ。いきなり体を許す必要はないから、泣き止め」
秀吉さんが貸してくれた手ぬぐいは、少しだけたばこのほろ苦い香りがした。
慶次の華やかな手ぬぐいを思い出して、胸が締め付けられる。