第24章 戦国時代の付き合い方(慶次)(R18)
「そこを結んで、あ、手ぬぐいだとやっぱり小さいね。交換しよう」
手ぬぐいと風呂敷を交換して結んでいると、慶次の手がふと止まった。
「どうしたの?どこかわからないとこあった?」
慶次「舞……」
「なに?」
周りは盛り上がっているので声を聞き取ろうと耳を近づけると、伸びてきた指に耳たぶを掴まれて引っ張られた。
「いたた!」
慶次「このブタの刺繍はなんだ!」
「え、だって飼ってるって聞いたから」
慶次「だからってわざわざ風呂敷に刺繍して歩く男が居るか!」
耳元でぼそぼそ文句を言われ、作戦がうまくいったとにんまりと笑ってやった。
ブタと同列にした仕返しだ。
「いいじゃん、別に。よく見なきゃわかんないよ」
慶次「お前な~」
「よく見てよ、可愛いでしょ?」
慶次「……似生の方がよっぽど良い」
「慶次のブタ愛ってすごいのね」
血の流れを止められる勢いで耳たぶをぎゅっと掴まれた。
「イタタタ!ごめん、ごめん!」
家康「さっきから何やってんの」
風呂敷講座に不参加だった家康がいつの間にかこっちを向いていた。
慶次の手が素早く離れ、私は耳たぶを揉みながら体勢をもとに戻した。
慶次「舞の耳にごみがついてただけだ」
(耳にごみって何!?)
見れば慶次の顔に、さっきの不機嫌の影はない。
「もう、慶次って意外と猫かぶりなんだね」
家康「慶次が猫かぶりって…何のこと?」
「え、だって……」
さっきと今とで態度が全然違うじゃない。
そう言おうとして慶次の大きな声に遮られた。
慶次「ここには猫かぶりどころか、とびきり怖い狐かぶりが居るだろっ。
さ、変なこと言ってないで続きしようぜ」
上手く話しの流れを変えられてしまい、私は頭の上にハテナを浮かべたまま風呂敷講座を再開した。
三成君にお酒をこぼされて家康の意識がそっちに向いたタイミングで慶次にひそひそ声で話しかけた。
「もしかして慶次って猫かぶってるのを隠してるの?」
慶次「さあな」
慶次は風呂敷に綺麗な折り目をつけている。
「隠すことないのに。私はいいと思うけどな」
慶次「能ある猫は爪を隠すって言うだろうが」
「……言いません」
顔を見合わせて、二人で吹き出した。