第1章 日ノ本一の…(上杉謙信)(R-18)
謙信「男の格好は勝手を知っているから脱がせやすくて良いな」
「謙信様……酷いです」
そんなこと言われたら男装して鍛錬もできないし、城のあちこちでこっそり片付けや掃除ができなくなってしまう。
(私の密かな楽しみだったのに…)
恨めしくて口が尖る。
謙信様は小さく笑うと尖った唇に指を滑らせた。
謙信「ふっ、好きに過ごせ。お前がそういう女だと知っていて奥に迎えたのだ。
城の者にも男装しているお前を見ても知らないふりをしていろと言っておく」
「いや…それって男装している意味がなくなるんじゃ…」
謙信「意味はあるぞ?俺が静華を愛でたくて堪らなくなる……」
謙信様の気持ちがわからないと不安を感じる暇もないくらい愛を囁いてくれる。
「う~~~、それはちょっと……。あ、でも一つお願いがあるんです」
謙信「なんだ?静華の願いならばなんでも叶えてやる」
「お時間がある時で良いので朝の鍛錬に付き合って欲しいのと、時々斬りかかってきて欲しいなぁ…と」
変なお願いをしている自覚はあったので視線をずらした。
謙信様は予想外の願いに目を瞬かせている。
「湯殿の襲撃の際、冷静でいられたのは謙信様に鍛えられていたからです。
私、もっと強くなりたいので……」
謙信様は片手を口にやり、吹き出した。
おさえようとしているのだろうけど、肩が震えている。
謙信「俺の妻は本当に面白い女な。かつて俺に『斬りかかって欲しい』などと言う人間は男を含めて居なかったぞ?」
「だって……刀を握っている時の謙信様って、本当に…その……綺麗で素敵なんですもの」
刀を構え、鋭い目つきで見据えられると、正直ドキドキしてしまう。