第1章 日ノ本一の…(上杉謙信)(R-18)
謙信様は大股で近づいてきて、壁際に追い詰め、私の身体を囲うように両手を突いた。
「あの……ここは廊下です」
謙信「わかっている。あと10歩歩けば俺の部屋だと言うこともな」
綺麗な指が近づいてきて左頬を優しく撫でられた。
謙信「今日は安静にしていろと何度も言っただろう?」
言いつけを破り勝手に動き回ったから怒っているみたいだ。
麗しいだなんて甘い言葉を言ってくれたけど、切れ長の瞳がいつにも増して鋭い。
「か、顔が近いです、謙信様!わかっているなら、こういうことは部屋に行ってからにしてください」
逃げようとしたら右手の指を絡めとられて壁に縫い付けられた。
(動けない……)
謙信様が本気を出せば私なんて直ぐに身動きできなくなる。
眼前に迫る憎たらしいほど美しい顔を睨みつけた。
「誰か来たらどうするんですか!」
謙信「ここは俺の城だ、何をしていようが咎める者はいない」
「咎める人が居なくとも、内心で軽蔑されたらどうするんですか。
とにかく私は嫌です!お離しください」
謙信「俺は静華の愛らしい姿を誰かに見られる方が嫌だがな。
女の姿はもちろん、男に扮(ふん)しても愛らしい」
薄い唇が寄せられ、口づけされた。
「や、謙信様っ!!廊下は嫌です!!」
謙信「部屋ならば良いのだな。ならば今すぐに…」
「え、ちがっ、待ってくだ、わわっ!?」
ぐいぐい手を引かれて部屋に押し込められた。
危機感を感じて逃げの姿勢をとると、謙信様は意地悪な笑みを浮かべて私を拘束した。
謙信「廊下は嫌なのだろう?静華の願いを聞き入れたのだ、観念しろ」
冷ややかな印象はどこへやら、夫婦になってからは顔を合わせれば楽しそうにしている。
「まだ昼前ですよっ!?」
じりじりと後ずさるも、獲物と見定められたからには逃げられそうにない。
謙信「そんなことは関係ない。お前がそのような恰好をして俺を誘うのが悪い」
いつの間にか袴の紐を解かれていてぎょっとする。
ずり落ちそうになった袴を押さえても、降り注ぐような口づけに手から力が抜けた。