第24章 戦国時代の付き合い方(慶次)(R18)
政宗「わかった。舞、そこのゴボウだけ終わらせといてくれよ」
「鬼っ!」
政宗「どうとでも」
たすきがけを取って着物の乱れを直すと、政宗はいつも通りの粋な装いで、ごぼうの汁で顔を汚している自分が余計残念に思えてくる。
政宗「いってくる。投げ出したら承知しないからな」
暖簾をめくって振り返った姿は、悔しいけど様になっていて格好良い。
「いってらっしゃい」
政宗「ついでにささがきにしておいてくれると助かる」
「やだ!」
(そんなことしたらまたゴボウの汁が跳ねるじゃない!)
即、断ると、政宗は笑いながら暖簾の向こうに歩いていった。
(もう!格好良いから何でも許されると思ってんじゃないわよ!)
悔し紛れにごしごし顔を拭っていると、
慶次「舞、こっちを向け」
口に料理を放り込まれた経験から、微妙に警戒しながら向いた…けど無駄だった。
慶次「よっと」
口に食べ物を放り込まれなかった代わりに、濡れた手ぬぐいを勢いよく押し付けられた。
「ぶっ!?」
パイ投げの時のように、手のひらサイズに広げた手ぬぐいを顔にベシャっと。
その状態でごしごし拭かれて息がしづらくて、手ぬぐいが離れる頃には窒息寸前だった。
「ぷはっ!呼吸とかお化粧とかちょっとくらい気にしてよ!」
肩でハアハア息をしていると、慶次が手ぬぐいを折り返して綺麗な面を出している。
もう一度やられてはかなわないと、顔を手でガードする。
慶次「あ?化粧なんて気にしてる場合か。よっぽど汚ねえぞ?
ほら、細かいの拭いてやるから手をどけろ」
ガードしていた手をあっさりとどけられ、慶次の顔が間近に迫ってきた。
「ちょ、っと…」
笑っている印象の強い慶次が真剣な顔で見てくるものだから、心臓が勝手に飛び跳ねた。
今度はさっきとは打って変わって、部分的にちょんちょんと触れてくるだけだ。
視線を真っすぐにできず、真横に視線をずらしていたけれど、手ぬぐいが唇に当たった瞬間に反射的にのけ反った。