第23章 不香の花(謙信様:誕生祝SS2023)
謙信「宴の最中、我慢していたのは俺だけか?」
謙信様が私の耳に唇を寄せ、囁くように聞いてくる。
低く掠れた囁きに狂おしい欲心が滲んでいる。
ゆっくり動いていた心臓が徐々に早まった。
皆に祝われている姿を嬉しいと感じていながら、謙信様と早く触れ合いたい欲求がくすぶっていた。
ずっと隣に座っていた謙信様が、私の欲求に気付かないはずがない。
頬を撫でられて顔をあげると、謙信様の表情を確認する間もなく唇を合わされた。
低めの体温が唇を通して伝わってきて……瞬間、ブワッと身体中の血が沸騰した。
火鉢やお風呂、お酒と、身体を温めてくれるものは多々あれど、謙信様の体温はどんなものよりも早く身体を熱くさせる。
触れ合わせている時間が長引くほどに熱は上がり、寒くないようにと厚着した着物の下で肌が汗ばみ始めた。
謙信様がくれる愛情で息ができなくなりそう。
そして謙信様を失ったら、間違いなく息ができなくなるだろう。
長い口づけが終わり、ハアと熱い吐息が漏れた。
「謙信様…、誕生日にお願いするのは申し訳ないのですが…」
謙信「そのように目を潤ませて、何を願う?」
優しく髪を梳かれて胸に幸せが満ちる。
「私は謙信様が居ればそれで良いんです。
欲しい物も、何も……ありません。謙信様が生きていてくれさえすれば何もいりません。
だからどうか、ずっとずっと長生きしてください」
できればずっとお傍に居させてもらえれば嬉しいけど、謙信様の家族や、家臣の人達が許してくれなければ、いつかお別れが来るかもしれない。
(一緒に歩めなかったとしても……生きていて欲しい)
髪を梳いていた手が止まった。