第23章 不香の花(謙信様:誕生祝SS2023)
「謙信様が皆に愛されていて嬉しいです。
でもやっぱり誕生日の最後におめでとうと言うのは私でありたかったので、6回目のおめでとうを贈りますね」
頭に軽い口づけを落とされると、そこだけポッと温かくなった。
謙信様に触れられた場所はいつもそこだけ体温が上がる。
触れられて嬉しいと熱が集まってくる。
それとも細胞の1つ1つが歓喜して発熱しているのか…。
愛しい気持ちが溢れてきて、固い胸板に頬を押し付けてうっとりと目をつむった。
日頃鍛えているせいなのか、それとも忍耐力なのか、ずっと私を抱いていても辛そうにすることもなく、足がしびれたと言われたこともない。
そんな些細なことが嬉しくて、顔が緩んで仕方ない。
謙信「今夜は随分と甘えてくるな?」
「少し飲み過ぎたかもしれません。
謙信様の体温が気持ち良いです…」
スリスリと猫のように甘えると謙信様が笑う気配がした。
謙信「愛らしいな。存分に甘えろ」
膝の上に乗せられ、頭を撫でられ、背中を撫でられ、ひたすら甘やかされる。
私が猫だったなら絶対喉を鳴らしているだろう。
(謙信様の誕生日なのに申し訳ないな…)
そう思いつつ、心地の良さに撫でる手を止めて欲しくないと思う。
誘惑と葛藤しながら、その手に甘える。
謙信「こうして舞を愛でられるのは幸せというものだ。
宴では、こうはいかぬからな」
「ずっと私の腰に手を回していたのはどなたですか?」
謙信「それだけでは俺が満たされないと知っているだろう?」
「ふふ、わかっています。人前で触れ合うのを嫌がる私のために、我慢してくださっているのも知っております」
もともと人目など気にしない謙信様が、私に触れないようにどれほど我慢しているか。
それはいつも我慢の後の二人きりの時間にわかる。
晴れ着のまま着替えもせず触れ合っている今夜は我慢を沢山した証拠。
寄せる期待に胸が疼き、モゾ…と身体を動かした。