第22章 あの夜に触れたもの(謙信様・誕生祝SS)
謙信「寝るだけだ、手は出さぬから安心しろ」
温まった布団を捲られ、入り込んできた冷気に身体ブルっと震えた。
せっかく温かくなってきたところだったのにと若干不機嫌になっていると何か滑り込んできた。
それは身体に寄り添うようにくっついてきて気持ちが良く、また枕をあてがわれて首が楽になった。
「ん~…」
温かさに頬よせると、トクトクと何かの音がする。
半分寝ていたので、その規則正しい音が心音とは気づかず、『時計の音がする』などと勘違いした。
謙信「醒めぬ夢ならば、どんなに良いだろうか。舞が目を覚ました時…果たしてどうなるか。俺を厭(いと)うか?」
(謙信様が心細にしている?)
(厭なんて言わないよ……あ、だめ、ねむ……い…)
おでこを硬い何かにスリスリさせながら呟いた。
「す………き、謙信さ、ま……お誕生日……めで…う」
伝えたいことは言ったと意識を手放した。
遠ざかる意識の向こうで強く抱きしめられ、唇に何かが触れた気がした。