第21章 姫は間諜？（隠語・難易度１）

急に動揺した舞を訝しみ、赤い目が政宗に向けられる。
政宗は面白いことになったと、目をギラリとさせている。


政宗「どうやら舞は、信長様か俺か、はたまたその他の誰かは分かりませんが、『嫁に貰って欲しい』と言っていたみたいですね。
　商人の女は、それを信長様と俺、どっちのことだ？って聞いています」


商人の女は信長と政宗を交互に見ながら早口でまくしたてる。


女「舞ちゃんだっきゃ（は）、けえる（帰る）とこも家族もねえんだべ（無いんだから）、はやぐ（早く）嫁っこ（お嫁さんに）に迎えて安心させてあげだらいがべがなぁ（あげたら良いでしょうに）」

（全文訳）「舞ちゃんは帰る所も家族も居ないんだから、早くお嫁さんにして安心させてあげたらいいのに」


舌がよく回る…という次元ではなく、まくしたてるような早口と独特の発音だ。
織田軍の武将や、その家臣達が『何も聞き取れなかった』というのは大げさではなかった。


信長「この女はなんと言った？」

政宗「ふっ」

「ま、待って、それはその……。それにとても偉い方だって言ったでしょ？」


止めようとする舞に、商人の女がまた意味不明の言葉を口にする。
商人の女が何か言うたびに信長の眉間の皺は深くなっていった。
言葉がわからないだけなのだが、不機嫌になっていると舞は勘違いして、余計に慌てている。


女「ああ？そんなもん、どんでもいいべな（どうでもいいでしょう）。好きだば（なら）好きってへったら（言ったら）いいべな（でしょう）」

（全文訳）「え？そんなのどうでも良いじゃん！好きなら好きって、言ったらいいじゃない」


「うっ、うん！そうだね！だから、この話はまた後で」

女「そうがぁ？（そう？）」


会話をなんとか終わらせようとした舞だが、それは政宗によって敢え無く失敗に終わった。