第21章 姫は間諜?(隠語・難易度1)
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家康が唖然として舞を見ている。
いつもの呆れ混じりの顔ではなく、心底驚いている。
家康「あんた…井戸を初めて見るって、使い方がわかんないって、本気で言ってるの?」
「うん…」
井戸の使い方がわからずに困っているところを家康と三成が通りかかったので掴まえたのだが、ひどく驚かれてしまい、舞は開き直ることにした。
「ねえ、どうやって使うの?」
舞とて、縄のついた木桶を井戸に放り込んで、それをひっぱりあげれば良いという原理はなんとなくわかっている。
しかし木桶を洗わずに井戸に放り込んで水が汚れないのか、そういう細かいところがわからない。
なにしろ木桶は古びていたし、それをくくっている縄も同様、古く黒ずんでいた。
現代の衛生観念からいくとアウトだ。
家康「はぁ。信長様に気に入られて良かったね。
じゃなきゃ、ここから出た瞬間に死んでる、絶対」
「そうかなぁ?っていうか、この桶、めっちゃ重たい!
ブリキとかプラスチック製の桶が欲しいなぁ」
100%木製の桶は持ち上げると5キロはありそうだった。
これに水が入れば一体何キロになるのかと舞はうーんと唸った。
家康「は?めっ…ちゃ?なに?こんな時に津軽の言葉使わないでよ」
「津軽の言葉なんて、あ…ごめん」
めっちゃ、ブリキやプラスチックといった単語を、家康は訛りだと受け止めたらしい。
そういうことにしておこうと舞は笑った。