第1章 日ノ本一の…(上杉謙信)(R-18)
兄上「はぁ……可愛い妹だと思っていたが、まさかお館様のお心を射止めるとは…」
「兄上…また気色の悪いことを……。でも謙信様は女嫌いだったのにどうして私をお傍に置きたいなんて思ったのでしょうか」
疑問を口にすると父上も兄上も途端に難しい顔になった。
父上「お館様はな…女嫌いと言われているが、遠ざけていただけだ。
あの方は過去に愛した姫を亡くしている。失うならばと遠ざけていただけだ」
兄上「その話、聞いたことがあります。家臣に引き裂かれ、相手の姫様は自害したとか…」
「そんなことが…」
その話を聞いた後に文を読めば、『命の危機が訪れても死なないだろうと思う』という文面に謙信様の辛かっただろう心中が伺い知れた。
「こんな私で良いのでしょうか。自分で言うのもなんですが…」
兄上「そこを気に入ってくださったんじゃないのか?」
父上「謙信様はお前の意見を聞いているが、うちに断る権利はないぞ、静華」
「は、はい。わかりました。お家のためならばどこへでも参りましょう」
かくして寺に身を寄せようとしていた私は、謙信様のはからいで奥として城にあがることになった。