第1章 日ノ本一の…(上杉謙信)(R-18)
『お前を城に迎えたいと思う』
(………え?)
「私にまた小姓見習いをして欲しいということでしょうか」
父上と兄上が呆れかえり、盛大なため息を吐いた。
兄上「お前……何をとぼけたことを言っているんだ。謙信様はお前を奥に迎えたいと言っているのだ」
「え?」
父上「良いから早く最後まで読みなさい」
「はい…」
『時が過ぎればお前が居なくなった穴もすぐに埋まるだろうと過ごしていたが、ふとした時に思い出す。お前を傍に置きたいとのだと気付いた。
俺の傍に居ればまた命の危機が訪れるだろう。だがお前ならば…あの時の約束通り死なないだろうと思う。お前の考えを聞かせて欲しい』
「………簡単に死にそうにないから傍に置きたいってことでしょうか?」
父上「文面の一部分を切り取って無礼な言い方をするんじゃないっ。
お館様のお心はここに書いてあるだろう?お前を慕ってくださっているのだ!」
「これだけじゃ謙信様の気持ちはわかりかねます……一緒に過ごしていた時、そんな気配は一度もありませんでしたし」
父上「あたり前だ、馬鹿者!お前を男だと信じ切っておられたのだから『そんな気配』がなかったのは当然だろう」
父上は顔を赤くして怒り、兄上は悩ましげに息を吐いた。