第21章 姫は間諜?(隠語・難易度1)
――――
信長と政宗が城門をくぐったあたりから何やら騒がしい。
見ると、緑色の唐草模様の風呂敷包みを背負った舞が、女中達に懸命に引き留められていた。
「うう、もう私はここに居られないんです。
家出…じゃない、城出するので放っておいてください」
女中1「姫様、何を早まったことを」
女中2「そうですよ、何があったか相談してくださいませ」
「恥ずかしくて穴があったら入りたい……。
もう死んじゃいたい」
女中3「ど、どうされたのですか、そんなに思い詰められて…」
「いーんです、どうせ、変なことばっかり口走る、おバカな女だし、結婚どころかここに住まわせてもらったところで何の益ももたらしませんし、うぅ。
というわけで、皆さん、お世話になりました」
女中達に頭を下げた舞だったが、腹に太い腕が巻き付き、気が付いた時には信長の肩に担ぎあげられていた。
「え?」
信長「舞の城出の話は忘れろ。こいつの世迷言だ」
女中達が返事をして場内に戻って行き、舞の逆さまの視界に政宗が見えた。
そこまできて信長達に追い付かれ、家出は失敗したのだと知った。
「やだ!家出する!じゃない、城出する!おろしてください、信長様!」
信長「貴様が出ていく必要がどこにある」
「やだやだ、恥ずかしい~。信長様に顔を合わせたくない、恥ずかしくて死んじゃう!政宗助けてー」
暴れ出した体を、信長は涼しい顔で封じている。
女一人に暴れられても、普段から鍛えている信長にはなんてことないのだ。
政宗は舞にひらひらと手を振った。
政宗「腹くくれよ。じゃあ、信長様、今日はこれで失礼しますよ」
「えぇー、政宗のいけずう~」
信長「いくぞ」
「やだ」
それまでジタバタ暴れていた舞は突然しおらしくなった。