第21章 姫は間諜?(隠語・難易度1)
政宗「信長様、俺が追いかけて慰めても良いんですか?」
意味ありげな問いかけに、信長は鋭い視線を投げかけた。
信長「政宗、あやつが俺を好いていたことを知っていたのか」
政宗「はい。あいつなりに隠していたつもりなのでしょうが、俺の目は誤魔化されませんよ。
だから疑惑についても最初から違うと踏んでいました」
政宗は舞の気持ちを知っていたが、信長の気持ちも知っていた。
とっくの昔から両想いだというのに、気づかないでいる二人に少々苛ついていたところだった。
政宗「俺が道化を演じたんですから、あとは任せますよ。信長様」
信長「……ふん。よかろう。
だが女を追いかけて走るのは性に合わん。城に帰ってから話をつける」
政宗「悠長に構えていると…」
けしかける政宗に対し、信長はぞっとするような視線を送った。
殺気が含まれているのではないかと思うほどに冷たい。
信長「政宗がここに居るのだ。かっさらおうとする男は他にも居るが、一番危険な貴様がここにおるなら、危険の大半は去っている」
そう言って歩き出した信長だったが、ここに来る時の倍の速さで城に向かっている。
政宗は笑いながら後をついていき、寺は美代と子供達だけになった。
女「話は済んだみてぇだなぁ」
いがった、いがった~と笑った美代の元に、翌日、信長から褒美と称した贈り物がたくさん届いたという。
女「こりゃあたまげた。舞ちゃんの旦那ぁ、おどごぶりだけじゃねえ、羽振りもいいんだなあ。
だどもこれ、どうやって持ってかえんべ……」
嬉しさ一転困った美代だった…。