第21章 姫は間諜?(隠語・難易度1)
政宗「嫁にもらってやる。俺のところに来いよ、舞」
信長「良いのか、舞?」
「……ぅ」
直ちに信長に告白するべきなのだろうが、人生で一度も告白したことがない舞の勇気は、嫌な音をたてている心臓の影に隠れて出てこようとしない。
それに加え、せっかく仲良しになった政宗と関係が崩れるのではと、断ることもできなかった。
舞が否定も肯定もしないので、このまま結婚の話がまとまるかという時に、訛りまくった言葉がそれを遮った。
女「なぁに舞ちゃんを虐めてんだ。
舞ちゃんが好きなのは政宗って男じゃねぇ、信長様だってへってらったよ?
違う男に嫁に出したらかわいそうだべな」
「み、美代さんっ!し、しー――!」
舞は美代の口を塞いで、ぎ、ぎ、ぎ…とぎこちない動きで二人の顔を見た。
信長が虚をつかれた顔をしていて、その後ろで政宗は声を殺して笑っている。
訛りがきつくても、今のは信長にもわかってしまったようだ。
「美代さん、今日はこのへんで!さようなら!!」
女「んあぁ?んだばなぁ~」
信長は走り去ろうとする舞の腕をつかんだ。
信長「言え。貴様は俺のところに来たいというのか?」
「えぇ…」
舞は真っ赤な顔で情けない声を出した。
「その…、ゆくゆくは(信長様のところに)行けたら良いなと思っていましたが、無理は重々承知の上というか、絶対無理だって思っていましたし、………だ、大それたことを考えてしまって、すみません!ごめんなさい!」
言っている間に悲しくなったのか、舞の目に涙が浮かび上がり、信長の腕を振り払って行ってしまった。
小さくなっていく後ろ姿と、それを追いかける護衛達を、政宗は『あーあ』と苦笑いをして見送っている。