第21章 姫は間諜?(隠語・難易度1)
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疑惑は拭えないまま、また幾日が過ぎ、しびれを切らした安土の武将達が、代わるがわる舞の後をつける事態になった。
一番は光秀、その次に秀吉と三成が、最後に家康が様子を見に行った。
隠密が言っていた通り、舞が意味不明の言葉を使っているのを目の当たりにし、全員首を捻りながら城に戻る始末。
その間も信長への襲撃は後を絶たず、情報が洩れているのは明らかだった。
舞は商人の女と、仕事の取引先以外は外部の人間と会っておらず、裏で通じている者がいるかどうか光秀さえ手がかりを掴めずにいた。
信長「このままでは拉致があかんな」
天主に召集された武将達は、一同難しい顔をしている。
光秀「俺達を欺き通すとは、小娘もなかなかやるものだな。
地名、人名以外ほとんど意味が分からないとは、よほど作りこまれた隠語だ」
家康「けど、話している時の様子を見れば、いつも通りの呑気な顔でしたよね。
あれで何か企んでたら逆に怖いんだけど」
秀吉「ああ、そうだな。あんなニコニコした顔で人を騙せるとしたら、ただ者じゃない。
よほど肝が据わっていないと無理だ」
信長「あの女は肝が据わっているところはあるが、隠し事の類(たぐい)はできぬはず。
俺たちに隠し事があれば、あの腑抜け面にすぐに出るはずだが」
三成「………突然申し訳ありませんが、政宗様はまだ奥州の問題が片付かないでしょうか?」
舞の件と何も関係ないじゃないかと、隣に座っている家康が呆れた顔をしている。
秀吉「なんでここで政宗が出てくるんだ?」
三成「政宗様に舞様と商人の会話を聞いてもらいたいと思いまして」
秀吉「政宗に聞かせても俺達と同じ反応じゃないか?」
三成「以前読んだ書物に書いてあったのですが、奥州よりさらに北奥に位置する場所に…」
政宗「さすが三成だな」
秀吉「政宗?」
襖の向こうから声がして、すぐに政宗が入ってきた。その後ろには慶次が居る。