第21章 姫は間諜?(隠語・難易度1)
信長「秀吉、舞が戻り次第ここに連れてこい。カマをかけて様子を見る」
秀吉「信長様、何かの間違いかもしれません。まずは俺から話を…」
信長が脇息にもたれながら冷めた目をしている。
信長「余計なことをするな。もし舞が裏切っているなら、その後ろに居る輩も捕らえねばならん。
下手に舞を刺激し、相手に逃げられては面倒だ」
信長の正論に秀吉は言葉を詰まらせた。
秀吉を兄のように慕ってくれる舞に疑いを抱えて接するなど、身を切られるようだった。
が、しかし……
秀吉「では舞を迎えに行って参ります」
そう言って天主を出ていった秀吉の横顔は、信長の右腕としての厳しい顔つきだった。
見ていた政宗がやれやれといったふうに、口を開いた。
政宗「まだ確定したわけでもないのに、秀吉のやつ、腹をくくりすぎだ」
信長「政宗、舞の疑惑を誰にも気取られぬように、内密で光秀のところ行け。
隠語に詳しい男が配下に居るはずだ、連れてこい。
もう1つ……貴様の領地が騒がしい。しっかり治めよ」
政宗「わかりました。少々お時間をください」
政宗が出ていった後、信長は窓辺に立って城下を眺めた。
城下町から城に向かってくる桃色の小さな人影を認め、目をすがめる。
そうしたところで真偽は確かめられない。が、信長は桃色の影を…舞を見つめ続けた。