第20章 空からサンタが降ってきた(謙信様)
(第三者目線)
舞と舞がキャーキャー言いながら去っていく様子を横目に、謙信と信玄は雪見酒をしていた。
今年は積雪が遅く民達は心配していたが、師走の半ばに大嵐がやってきて一面を雪景色にして去っていった。
こうなると戦は皆無となり、せいぜい小競り合い程度になる。
その他は水面下での出来事で謙信の興味はそこにはない。
謙信にとって退屈な季節だったが、今年は恋仲のおかげで少々勝手が違った。
信玄「俺達の姫は可愛らしいな」
熱燗の入った杯を信玄が一気に飲み干した。
涼し気な目元が優しいラインを描いている。
謙信「……ふん」
信玄「この城に女の声が響くようになるなんてな。かつての春日山では想像もできなかったな。
赤い着物を着てお前の腕の中で目を輝かせてたあの娘は、本当に天からの贈り物だった。
お前の心を救い、舞と俺の間をギリギリ繋いでくれた時もあった。感謝しかないよ」
舞と結びついた信玄は500年後で病を治して帰ってきた。
信玄の病を知っていた者も、そうでない者も、信玄の完全復活に奇跡が起きたと口々に言っている。
謙信「サンタは架空の存在だと言われていると後から聞いたが、あいつが不思議な存在であることに変わりはない。
舞が来て、俺は過去から解き放たれ、お前の運命の流れも変わった」
謙信の前にはカルメ焼きが入った包みがあり、甘い芳香を漂わせている。
謙信自らが舞のために焼いたものだ。
今もだが、これを焼いている時はガツンとくる甘い香りが立ちのぼり、謙信は胸やけを起こして倒れそうになった。
だがそんな思いをしてでも恋仲の女にクリスマスの贈り物をしたいとは………人間変わるものだ。
隙あらば信玄の手が伸びてくるのを撃退しながら、謙信は自らの変化を感じていた。
信玄「しかし知ってるか?
軍神は奇跡の乙女を伴侶しにしたと、この日ノ本を制するのは信長ではなく謙信じゃないかって、もっぱらの噂らしいぞ?」
謙信「天下人なんぞに興味はない。
舞が傍におき、自国が治まっているのであれば良い」
信玄「謙虚なこった」
熱燗の熱が二人の体を温め、心地よい酔いをもたらした頃……