第20章 空からサンタが降ってきた(謙信様)
「それで……突然ですみませんが、ソリから落ちてしまって空の世界に帰れなくなってしまいました。どうかお傍に置いていただけませんか?
うさぎ小屋の掃除でもなんでもしますから」
謙信「うさぎ小屋?何故俺のところにうさぎが居ると知っている?」
「サンタクロースは贈り物をあげる前に、その子がどんな子か、ちゃんと良い子にしていたか下調べをするんです」
謙信「子という年齢ではないが」
まあ、どこをどう見ても子供という年齢じゃないだろう。
よく見なくても大人の男性だし気品ある美しさまで漂っている。
さっきの力強い手の感触を思い出して顔が赤くなりそうになった。
「はあ、格好いい、じゃない!細かいことは気にしないでください。
たくさんの人が居る中で謙信様が特別に見えたんです。だから…クリスマスの贈り物を届けたいなと…」
少し無理やりな設定に冷や汗が出てきた。
謙信「さっきの乗馬を見れば、お前の平衡感覚が恐ろしく狂っているのはわかる。
落ちると帰れないとわかっていて落ちてくるとは愚かな女だ」
「う…謙信様に見惚れていたら落ちちゃったんです」
初めての乗馬で横座りだったんだもん、仕方ないでしょ!と言いたいのを我慢して、苦しい言い訳をする。
でも私が本物のサンタだったら、そうだろうなと思った。
誰だって推しが生きて動いていたら身を乗り出して見ようとするに違いない。
確実に落ちる、というか、率先して降りるだろう。
謙信「俺に見惚れていただと?」
「ええ、だってそれはもう謙信様は魅力的でしたので。
私は行く当てもありませんので、できるなら謙信様に拾っていただけると嬉しいです」
最後は照れ臭くなって笑ってしまった。
今までの人生で、こんなに他人に好意を見せ、伝えたのは初めてだった。
夢だと思えば現実ではできないこともできてしまう。
謙信「俺は女などいらん」
謙信様らしい潔い断り方だった。ヒロインの姫だって最初はこんな風に素っ気ない態度をとられていた。
これから攻略すれば良いだけのことだ。このくらいの素っ気なさでめげるもんか。