第20章 空からサンタが降ってきた(謙信様)
謙信「その白い羽織を脱げ」
「え?」
謙信「いいから脱げ。夏も盛りだ。寒くも無いのだから文句はなかろう」
「は、はい」
言われるままに急いでダウンコートを脱いだ途端、半袖を見咎められて文句を言われた。
謙信「待て、何故お前の着物の袖はそんなに短いのだ?」
「仕事先の店長の趣味…ですかね。きっと布地が少ない分、安いからでしょう」
謙信「………はぁ」
(う、今日一番のため息!)
謙信「もう良い。その白い外套は着ていろ」
謙信様は自分の外套を持ってこさせて、私の身体に巻き付けるように言った。
その間に謙信様は馬に乗ってしまい、どうするのかと思ったら、家臣の方が私を抱き上げて馬に乗せる手伝いをしてくれた。
謙信様の前に横座りする体勢は、不安定にグラグラと揺れる。
「お、ちるっ」
謙信「っ!今から馬を全力で走らせるぞ。しっかり掴まっていろ」
乗った傍から転げ落ちそうになった身体を、謙信様が慌てた顔で支えてくれた。
態度や言葉は素っ気ないけど、ちゃんと面倒を見てくれる。
今まで謙信様を最推しで生きてきて間違いじゃなかった。
「掴まれって、どこに、わわ」
身体がグラグラして安定しない。
お、落ちる…!
謙信「片手はここに、後は……好きにしろ」
右手を馬の背に導かれ、革製の取手のような場所に導かれた。
右手を取ってくれた大きな手や、好きにしろと逸らされた二色の視線に胸がキュンとなった。
(やっぱり………好きだなぁ)
掴まるものがない左手を謙信様の太ももに伸ばすとパシン!と手を叩かれ、鋭く睨まれた。
格好良い……んだけど、視線が痛すぎる。
(うう…なんで叩かれたのかな)
謙信「どこを掴もうとしている」
「背中に手を回したら、その…大胆過ぎるっていうか、図々しいって呆れられちゃうかと思いまして」
謙信「余計な遠慮をしてる暇があったら腰か背に手を回せ。
男の足に掴まるやつがどこに居る」
(ここにいるよぉ…。これでも遠慮した上での行動だったんだけどな)
凹みながら言われた通りにする。
「こうですか?」
遠慮がちに腰に手を回すと、謙信様の鎖骨に頬が当たるくらい半身がくっついた。
左胸の側面が甲冑に当たりムニュっと形を変え、きっと謙信様は気づいていないだろうけど、私は恥ずかしくて俯いた。