第20章 空からサンタが降ってきた(謙信様)
「謙信様っ!?」
3次元の謙信様が居る。
息をして、瞬きをして、切れ長の目でじっと私を見ている。
感情がわかりにくい顔の端々に戸惑いの色が浮かんでいた。
(本物?いやいや、待って、よく考えなさいよ。ゲームの世界に飛び込むとか、ありえないでしょ)
昔からファンタジーが好きだけど、そんな話は作り話の設定にすぎない。
となれば、これはラッキーな夢なんだ。
謙信様が夢に出てきてくれたらとずっと思い続けてきたから、クリスマスというめでたい日にそれが叶ったんだ。
きっと世界中に溢れたクリスマスの幸せが、おこぼれで私のところにやってきたに違いない!
(やったー!夢から覚めないうちに、やりたいことをしなくちゃ!)
まずは触らなくては!
そう決めた私は、強い視線を感じて辺りを見回して……言葉を失った。
「!!」
視界にうつる人達は鎧を身に着け、歩兵と騎馬兵が入り混じって私に注目している。
毘沙門天と、20m離れた場所に織田軍の旗印が見えた。
遠くでは両軍がぶつかりあっている声があがっているが、この周辺は突然現れた私を中心に静かで、旗印がバタバタと風をはらんで揺れる音だけが響いている。
「まさかここって戦場で、しかも前線……っぽい?」
冷静になってみれば馬から降りているが謙信様は甲冑姿だ。
戦の真っ最中に来てしまったようだ。
本来ならそんな状況は腰を抜かすだろうけど夢だと思えば怖くない。
(夢ならもっと二人きりのシチュが良かったな)
雪が降り積もった春日山城のお庭で、じゃれつくウサギを相手にしながらお話するとか…。
信玄「謙信、その様子だと『女連れで戦に出てくるな』って信長に文句は言えないぞ?」
謙信様の背後から声がして大きな影が動いた。
(し、信玄様だ……)
キャラ設定では185㎝だった気がするけど、堂々とした風格とがっちりとした体格なので、もっと大きく見える。
目が合うと信玄様は柔らかい笑みを浮かべてくれて、はからずも胸がときめいた。
2次元の時と比べようもない魅力が、信玄様の身体からにじみ出ている。
(うう、推し変はしないもん。大人の魅力にちょっとあてられただけ…)
そう言い訳しても、誤魔化しようもなく心臓がドキドキしている。
謙信様は顔をしかめて信玄様を睨みつけた。