第19章 蘭丸君とメリークリスマス(2022年)
「そうだね…、大事な人に笑わないで欲しいなんて思う人なんか居ないよね。
離れていても会えなくても、大事な人が生きて、幸せなら良いって思うよね。
私……ずっと勘違いしてたんだ」
蘭丸「そうだよ。だから苦しまないで、舞様。
君は後ろ暗いことをしてるわけじゃないんだ。ここで皆と苦楽を共にして生きていいんだ」
「へへ、ありがとう、蘭丸君」
蘭丸「どういたしまして!さ、ご飯にしよ!」
「ねえねえ、蘭丸君、後でこのマキビシで遊ぼうよ」
蘭丸「まきびしでどうやって遊ぶの?」
「どっちがまきびしを綺麗にまけるか競争しようよ」
蘭丸「ふ、いいよ♪」
蘭丸君は余裕綽々といった顔で、干し肉を細く割いている。『そんなことなら負けないよ』という感じだ。
「なんだか自身満々だね、私だって負けないんだから♪」
そう宣戦布告したものの、蘭丸君はびっくりするくらいまきびしを綺麗に撒いて見せてくれて、私は何度やっても負けてしまった。
二人で過ごしたクリスマスイブは、日付をまたいでも続き、思い出に残る楽しい夜になった。
大満足して布団に入った夜、戦国時代に来て初めて、家族が夢に現れた。
半年間ずっと夢みていた家族との再会は、夢だとわかっていても嬉しくて、思いっきり抱きついた。
『私は生きてるから、心配しないで。こっちの世も凄く楽しいよ』
夢の終わりを感じて家族にそう伝えた時、蘭丸君が迎えに来てくれた。
蘭丸『舞様、おかえり。寂しくないように、こっちに居る間は俺がついてるからね』
そう言ってくれた顔はとても頼もしくて、胸がくすぐったくなった。
家族に笑顔でお別れを言うと意識が浮上し、短刀が突き刺さったままの天井が映った。
「やだ……どうしよう、何かドキドキする」
柔らかい朝日と、早朝の鳥の声を聴きながら、私は胸の前でぎゅっと手を握った。