第1章 日ノ本一の…(上杉謙信)(R-18)
尚文が部屋を出ていき、一人になった途端……大粒の涙がこぼれた。
謙信様が贈ってくれた着物は夜を思わせる濃い青地。
宵闇に横たわる天の川のように部分的に薄い水色に染められ、そこに桃色や紫色、水色のお花がたくさん咲いていて綺麗だった。
満開の花達が夜風に咲き乱れている…そんな情景が浮かぶ。
そしてその花達と遊ぶ可愛らしいうさぎ達。
(私が好きだと言ったからですか?謙信様……)
冷やかな見目とはかけ離れた、静かな優しさを持つ人…だった。
ひとたび城を出れば、雲の上の人だ。
もう二度と会うことはないだろう。
「謙信様……ありがとうございます」
直接お礼を言えない苦しさに胸が押しつぶされそうだった。