第19章 蘭丸君とメリークリスマス(2022年)
蘭丸君のおかげで説教タイムを回避できたと喜びつつ、それを悟られないようにしおらしく返事をした。
これで一段落と思ったのにそうじゃなかった。
部屋を出ようとした秀吉さんが何かに気付いたように足を止めた。
秀吉「なんか寒いと思ったら窓が開いてるじゃないか。女の子は身体を冷やしたらダメだぞ」
秀吉さんが窓に向かって歩いていき、急に飛び上がったので、私の方が飛び上がるくらいびっくりした。
(な、なに!?)
秀吉「いってぇ!!」
蘭丸「あ」
三成「ど、どうされましたか!?」
「秀吉さん?!大丈夫?」
何事かと傍に行くと、佐助君が置いていったまきびしが秀吉さんの足袋にくっついていた。
佐助君愛用の品だけあって、まきびしの棘は鋭く尖っている。
秀吉「なんでここにまきびしがあるんだ?」
(うぅ、また言い訳しなくちゃ。早く終わってほしい…)
「えー、あー、んー、ほら、イタキモチイイってあるでしょ?
最近すごーく手のひらが凝ってたから、まきびしでツンツンして、痛いのに気持ち良い♡ってやってたのよ!」
(うわー、くるしーよー、この言い訳~!)
隣に立つ蘭丸君の口からフッというと息が洩れた。
苦し紛れの言い訳が笑いのツボにヒットしているのかもしれない。
秀吉「痛いのに気持ち良いって、意外な思考だな。
しかもなんでマキビシなんだ、かなり鋭いぞ?怪我しないようにしろよ」
痛みで少し涙目になっている秀吉さんはすっかり呆れ顔だ。
没収されるかと心配したけれど、秀吉さんはそうっとまきびしを摘まむと、元の場所に戻してくれた。
三成「舞様は痛いのがお好きなのですね!わかりました!
周知しておきます」
「え!?そんなっ、周知させるような情報じゃないでしょ!」
痛いのが好きだなんて変態だと思われるか、信長様や政宗あたりに悪戯されるかだ。周知してもらっても何の得にもならない。
しかも何でイタキモチイイが、痛いのが好きになってるのか…。
戦国武将に、その辺の微細な感覚は通じないのだろうか。