第19章 蘭丸君とメリークリスマス(2022年)
秀吉「さっき城内で発砲音があったが、知っているか?」
蘭丸「えー?俺達、実験に夢中で気が付かなかったよ。いつのこと?」
蘭丸君は演技力抜群というか、すごくナチュラルにしらばっくれ、私はボロを出さないようにこくこくと頷くだけにしておいた。
三成「まだ四半刻も過ぎておりません。
家臣達はこちらの方角から音がしたと証言しておりまして、調査に来てみたのですが……。
お二人ともご存じないようなので違う部屋をあたってみますね」
どうやら疑いは晴れて、二人の意識は他に移ったようだ。
ところが…
秀吉「変な実験してないでちゃんと夕餉を食べろよ。
ん?舞、あの短刀は何かあったのか!?」
秀吉さんと三成君が天井に刺さった短刀をみて気色ばんだ。
匂いばかり気にして短刀のことをすっかり忘れていた。
「あ、あれね!えー、あー、曲者の気配がした時のために、短刀を投げる練習をしていたんだ。
上手くいったから、記念にそのままにしてるのっ♪すごいでしょ?秀吉さん!」
無邪気に喜び、褒めてもらおうとする女を演じる。
言い訳はさっきから綱渡り状態で内心ひーひー言っている。
秀吉「危ないじゃないか!そんなこと練習しなくて良い。
まさかと思うが一人で練習していたのか?」
秀吉さんの眉間にぐっと皺が寄り、説教モードに入りそうだ。どうしよう、ピンチだ。
蘭丸「ちゃんと見ていたから大丈夫だよ、秀吉さん。
それより曲者を探している最中なんでしょ?早く行った方が良いよ」
秀吉「そうだな。いいか、舞?今後短刀を天井に投げる練習は禁止だ。
お前は針子なんだから、手に傷がついたら大変だからな」
「はい」