第19章 蘭丸君とメリークリスマス(2022年)
「へえ、私も匂いを嗅いでもいい?」
蘭丸「はい、どうぞ♪」
「い~匂い!」
いりこやカツオ節の魚の香りに、干しシイタケや、昆布がほのかに香っている。
蘭丸「こっちのは干し肉…かな。なんの肉だろう。嗅いだことがない匂いがするな」
戸惑っている蘭丸君から干し肉を受け取ると、肉の香りをひき立てるようなスパイシーな香りがした。
(胡椒だ!これってビーフジャーキー?)
表面に少し艶があり赤茶色の干し肉は、現代で売っていたものとなんら変わりない品だ。
「蘭丸君……これ、すごく貴重だよ。初めての香りで戸惑うかもしれないけど胡椒って言って、南蛮では金銀より高値で取引される品なの。体にも良いし、絶対食べた方が良いよ」
この時代では牛肉を食べる習慣がないし、安土城の食事も割と素食気味だ。体が資本の世の中なのに、圧倒的にたんぱく質が足りていない。
だから佐助君もこうしてお手製ジャーキーを作って栄養を補っているんだろう。
蘭丸「舞様は食べたことあるの?」
「うん!お肉は噛めば噛むほど良い味が出てくるし、胡椒は少し辛味があって鼻に抜ける香りが好き!
こんな珍しいものを贈ってくれるなんて、さすがサンタクロースだね」
蘭丸「まきびしと携帯食……。サンタさんって、なんでも見破るんだね。凄いな」
蘭丸君は尊敬のまなざしを天井に向けている。
「見破る?なんのこと?」
蘭丸「ううん、なんでもない!クッキーを食べたら、この干し肉食べてみようか」
「うん!あれ…」
蘭丸「……サンタさんって意外と食いしん坊だったりするの?」
クッキーがお皿ごとなくなっていた。
包んでいなかったから、慌てた佐助君が皿ごと持って行ったのだろう。
今頃それを持って天井裏を移動しているのかと思うと、申し訳ないけど笑えてきた。
今夜のお返しに、後でクリスマスプレゼントをあげよう。