第19章 蘭丸君とメリークリスマス(2022年)
「え?なに、どうしたの、わっ!?」
短刀が天井に届く前に蘭丸君の腕に攫われて、部屋の隅へと移動した。
ガッと短剣が天井板に突き刺さった。
蘭丸「天井裏に誰かいるっ」
短剣が刺さっている場所を睨む横顔は、ドキッとするくらい凛々しかった。
でも警戒度を上げているところ申し訳ないけれど、私は天井裏に居る『誰か』にとても心当たりがあったので、蘭丸君と天井板を交互に見て、どうしようか迷ってしまった。
多分佐助君だ。
クリスマスだから、わざわざ来てくれたに違いない。おそらくプレゼントを持って。
(そうだ!)
サンタの説明で蘭丸君に教えていなかったことがまだあった。
それを利用して、少し嘘をつかせてもらおう。
天井裏に聞こえるように、少し大きめの声で蘭丸君に話しかけた。
「あ~、蘭丸君、もしかしてサンタさんが来てくれたかもしれない!!
ほら、ここで私達がクリスマスパーティーをしていたから、プレゼントを持ってきてくれたのかも!この通り靴下も用意してあるしね」
蘭丸「え?この世にもサンタクロースって居るの?
舞様が住んでいた世の話じゃなかったんだ?」
警戒を半分解いて、蘭丸君はキョトンとしている。素直な反応に良心がチクチクといたんだ。
「サ、サンタクロースはクリスマスを祝っている人のところに来るんだよ」
もうこうなったら『佐助君にサンタになりきってもらおう作戦』だ。
「それでね、蘭丸君。
サンタさんは寝ていないとプレゼントをくれないんだ。だから寝たふりをしよう!」
蘭丸「え?寝るの?ここで?」
お膳やクッキーのお皿があって、もちろん寝る時間でもないので布団も敷いていない。
「いーの、いーの!このさい雑魚寝で良いから。
寝てるフリをしなくちゃいけない決まりなのよ」
蘭丸「俺、サンタさん見てみたい」
「う」
子供のように純粋な眼差しにたじろいだ。
蘭丸君はかわいいから、きゅるんとした目で見つめられると何でも頷いてあげたくなっちゃう。