第19章 蘭丸君とメリークリスマス(2022年)
私が現れた瞬間を目撃したってことは、信長様襲撃直前まであの場に居たことになる。
なんでだろう。
なんで火がついてすぐに逃げ出したなんて嘘を言い、信長様の救出に動かなかったんだろう。
重大なことを聞いたような気がして、急に恐ろしくなった。
蘭丸「俺の嘘を……秘密にしてくれる?」
「う、うん。よくわからないけど、わかった。
私も、さっきの秘密は誰にも知られたくないし」
蘭丸「そう、良かった☆」
心底ホッとしたように蘭丸君は表情を緩めた。
(襲撃した人物は顕如というお坊さんらしいから、蘭丸君が信長様にどうこうしたわけじゃない、よね)
そう結論づけて、私は秘密を守ることにした。
蘭丸「それで舞様が星屑の中から現れたから、ずっと天人なのかと思ってた。
大事な人達が会えないくらい遠くに居るって聞いたら、やっぱりそうなのかなって。
だからこの世の人間じゃないの?って聞いたんだ」
「天人なんて、そんな立派じゃないよ。
でもこの戦国の世とは違うところから来たっていうのは正解。それ以上は言えないんだけど。
でもまさか私がこっちに来た瞬間を見ていた人が居たなんて……びっくりだよ」
私自身、自分がどんな風に本能寺に現れたのか知らなかった。
とにかく目の前の炎と、信長様、忍び寄る影に気をとられ、自分の体を見下ろすなんて暇はなかった。
蘭丸「凄く綺麗だったよ。天から舞い降りてきたって言っても良いくらい!」
「そんな、大げさだよ…」
蘭丸「大げさじゃないってば!星屑の中から人が現れたんだよ?俺、多分一生忘れない光景だよ。
舞様はどんな人なんだろうって凄く気になって、話してみたら凄く純粋で可愛くて、俺、君のこと大好きなんだ」
「そんな、蘭丸君の方が純粋で可愛いでしょ?気配り屋さんだし、私の国にきたら間違いなく人気者になれるよ」
蘭丸「ううん、俺なんかよりずっと舞様の方が可愛い」
大好きだ、可愛いだなんて言われたの、子供の時以来かもしれない。
一瞬ドキッとして、今の好きは友達として好きってことだよねと言い聞かせた。