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☆姫の想い、彼の心☆ <イケメン戦国>

第19章 蘭丸君とメリークリスマス(2022年)


「そうだよ。ちゃんといつか帰るから待っててねって」


さっき灰が舞い上がった宙を見据え、何故か笑ってしまった。
いつもアイドルみたいに笑っている蘭丸君に、こんな顔させちゃうなんて馬鹿だな。


蘭丸「今日の舞様は消えてしまいそうだね。
 ねえ、帰ったら寂しいよ。俺だけじゃなく、信長様達もきっと口では言わないかもしれないけど、絶対寂しがると思う」

「ふふ、ありがとう、蘭丸君。
 私も寂しいよ。でも私はここに居たらいけない人間なの。
 ちゃんと元の場所に帰らなきゃいけないから、本当なら皆とは仲良くならずに距離を置いた方が良かったんだよ」


どうしてか素直な気持ちがスルンと出てきた。

祈りを捧げたあとの、まっさらな気持ちがそうさせたのかわからないけれど、妙に心が凪いで素直になれた。


「気が付いたら皆と仲良くなっていて…。
 居場所を作ってしまったら、後で離れる時に後悔するのにね」

蘭丸「舞様……」


いつも皆と笑い合い、戦場を乗り越えてきた私の本当の気持ちに、蘭丸君は目を大きく見開いて言葉つむげないでいる。

仲良くならなきゃ良かった、居場所を作って後悔しているなんて、せっかく安土の皆が親切に接してくれているのに酷いと思っているだろう。

視線を合わせていられなくなって、黒い瞳から目を逸らした。


「時々ね……苦しいの。
 安土の皆と笑っている時に、家族にごめんねって謝ってる時があって。
 心配させているのに、私は笑ってるなんて、薄情者でごめんって……」

蘭丸「舞様がそんな………、そんな気持ちでいたなんて、ごめん、気づかなくて」


詰(なじ)られると思ったのに予想外に謝られて、その声も震えていた。
蘭丸君が足を動かすと雪を踏む音がした。

そういえば、なんでさっきは雪を踏む音がしなかったんだろう。背後に来るまで、本当に気づかなかった。

けれど今はその違和感と向き合う余裕はなかった。

蘭丸君に力強くぎゅっと両手を握られた。

焦燥感を漂わせ、黒い瞳は大きく揺れていた。何かを悲痛に訴える、心の声が聞こえてくるような気がした。


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