第1章 日ノ本一の…(上杉謙信)(R-18)
(姫目線)
「ん………あれ?う……」
目を開けた途端、ぐるぐる回る天井に気分が悪くなる。
尚文「姉上っ!?目が覚めたのですか?」
「え、尚文…」
聞きたい事があったのに、尚文は『父上―――、母上―――!姉上が目を覚ましました!』と大きな声で廊下を走っていく。
「私……なんで春日山城じゃなく、家に居るの?」
眩暈が酷くて考え事もできない。
枕元に置いてあった水を一気に飲み干した。
騒々しい気配とともに両親と尚文が部屋に入ってきた。
父上「おお、良かったっ!猛毒を受けて生死を彷徨ったのだぞ」
どうやら春日山でのことは夢でした…というわけではないらしい。
悪心に大きく息を吐いた。
「私が尚文ではないとバレてしまったのでしょう?どうしてお咎めもなく私は家に帰され、父上も生きておられるのですか?」
正体を偽って城に仕えていたなんて、家が断絶されてもおかしくはない。
母上「お館様の計らいですよ」
「謙信様の…?」
母上が目に涙を浮かべて頷いた。
母上「あなたが気を失って直ぐに女だと気が付いたお館様は、医師以外には誰の目にも触れさせないようにしてくださったのです」
腕には白い包帯が厚く巻かれていて、胸が締めつけられた。
父上「正体を偽っていたことは咎められたが、お前の働きには感謝すると仰られていた。
だが『尚文はこれ以上城には置いてはおけない。連れて帰れ』と言われ、容体が落ち着いた昨日、駕籠でここまで帰ってきたのだ」
「兄上は?」
父上「お前の罪は不問とされ、尚善は春日山城で働き始めた。お前が迷惑をかけた分、今頃奮闘している頃だろう」
「そうですか…」