第18章 生き標(謙信様)
あれから紆余曲折を経て、私はあなたの…謙信様のお傍に居る。
この時代に完全に馴染んだわけじゃない。
時々自分を見失いそうになるたびに、謙信様が私を立ち止まらせてくれる。
心の中に必死に響いているものがなんなのか。
渦巻いている気持ちの根底に何があるのか。
誰にも知られたくなくて、静かに苦しむ私に寄り添ってくれる。
歴史に名を残す人の隣で、私ができることはなんだろうかといつも考えている。
謙信様の手を取り、想い、生き続ける。
何にも秀でていない私は、真っすぐな愛を伝え、あなたの心を守るために生きることしかできない。
初めて愛することを知った私は、盲目のようにあなたを愛する事しかできない。
謙信「それで良い。お前はそこに居るだけで俺の生きる標(しるべ)となっている」
謙信様はいつもそう言ってくれる。
嬉しい。
居てくれるだけで良いなんて。
私だって謙信様の存在自体が標になっている。
愛し、愛されて、溢れるこの気持ちは止まらない。
「謙信様に出会えて幸せです」
謙信「俺もお前に出会えて幸せだぞ?」
「ふふ…、嬉しいです」
あなたに救われた命で、いつかお役に立ちたい。
まだどんな形で実るかわからないけど、謙信様のためにできることをしたい。
あなたが治める国のために
あなたを慕ってついてくる人達のために
今はまだ胸に秘めた小さな想いでしかない。
いつか花開かせられる日を夢見ている。